現在入社5年目のカタリストです。入社当初はソリューション事業を中心に担当してきました。それらの経験を踏まえながら、デジタルとリアルの境界にあるような案件、例えば、最近だとデジタルインフォメーションウォールに関わっています。これはチームラボのプロダクトで、商品データベースとタッチディスプレイを使って館内案内やショーウィンドウの役割をするリアル店舗用のシステムなんですが、商品データの扱い方やお客様への情報の見せ方などには、まさにソリューション事業のノウハウが活きていると思います。
エントリーする側にとっては、論文やポートフォリオでの選考とだけ言われても、言語化された採点基準があるわけではないし、準備が難しいですよね。自分なりにアドバイスをすると、論文で扱っている事象や研究の核心部分がシンプルで的確に、分かりやすく整理されていることが大事だと思います。
研究開発や事業の現場では、論文全体を精読してもらえることは稀で、まずサマリーの内容でふるいにかけられる現実があります。その段階から人を魅きつけて、興味を持ってもらえるかどうか。サマリーは書き手が読み手に宛てたメッセージでもあると思うので、研究成果や影響範囲が小さいものであっても、何を意図し、どんな効果があったなど、内容をいかに精選するかがとても重要だと考えています。自分の研究の本質を見極めていないと、あれもこれも入れたくなってしまって、取捨選択は進まないですしね。読んでもらう(見てもらう)為の意識は非常に大事なことだと思います。
それから、研究テーマが何であっても、特に気にしないですね。多岐にわたるカタリストの業務をこなせるかどうかなんて、ひとつの分野の専門性だけで判断するのは難しいと思いますし。テーマそのものではなく、本人がどう考えて、どう動いてアウトプットを作ったのかを見たいです。チームラボの事業に直接は関係ないようなテーマの論文であっても、意義や主張、その裏付けがよく練りこまれた論文には魅力を感じます。とにかく、人に訴えかけるならば、わかりやすく、伝わるものであること。そのうえで、研究の独自性や将来性を論じてほしいなと思います。
大学院の卒業制作では、iPadに接続できる電子書籍用インターフェイスを作りました。端末の横に、書籍の側面に似せた紙束風デザインの「めくりセンサー」を取りつけます。それを触ってページをめくる動作をすると、電子書籍の中でページ送り処理が走ります。めくりセンサーを1枚めくると1ページめくれ、一気にめくると複数ページが勢いよくめくれたり、ひと束を全部まとめて一回はじくとページもまとめてめくられるなど、紙を指で触る時の動きや感触をデジタルの中に再構築しました。ほとんどの電子書籍アプリでは、ページ送りをするとき、画面を何度もスワイプするかスクロールバーを目測で動かすしか方法がないのですが、もっと感覚的に、紙媒体での操作感覚をデジタルに融合することで、新しい何かが実現できないものか、というテーマを追求してみました。
この研究で本当によかったと思っているのは、ひとつの体験に関わってくるソフトとハードの両方を自分で作ってみて、本当に良いものは何なのか、試行錯誤しながら制作を進められたことです。このあたりの体験は、デジタルインフォーメーションウォールにも生かしていきたいですね。
高校卒業後は武蔵野美術大学に進学して、大学2年生までは本当に絵ばかり描いていました。絵を描くことは今でも好きですし、当時も楽しかったのですが、一方で創作に行き詰まりを感じることもありました。自分の個性に従って描きあげたつもりでも、仕上がった作品には、好きな作家さんの作風が見え隠れしたんです。将来はイラストレーターになりたいと思っていたのですが、ファンとして受けた影響が絵に表れてしまうことに、悩んだ時期がありました。
そこで、自分の方向性を模索するために、イラストだけでなく色々な表現方法に触れてみることにしました。ちょうど所属していた学科は幅広い表現方法に触れるカリキュラムを組んでいたので、グラフィックやプロダクトのデザイン、アニメーション、動画撮影、写真…そのほか、本当に広く浅く、様々な表現方法に触れてみました。そうして試行錯誤していくうちに、最後にたどり着いたのがインタラクションデザインでした。
小型のマイコンボードを使ってモーターなどを動かす電子工作を卒業制作でやったんです。これが当時の自分の感覚にぴったりとはまって、イラストレーターを目指すのもいいけど、この分野への興味をもうちょっと深堀りしていきたいなと考えるようになりました。それで卒業後には情報科学芸術大学院大学(通称IAMAS)に進んで、ソフトウェアとハードウェアの両方にまたがるようなものづくりを研究していました。
制作以外だと、僕の場合はバレーボールですね。中・高校時代にやっていたバレーボールを大学に入ってからも続けていました。大会で上位入賞を目指すような競技志向ではなく、楽しむことが最優先のゆるいバレーボールだったんですが、それがとても好きで、サークルを掛け持ちして週3〜4日はやっていました。時々は企業のチームと試合を組んだりもしたんですが、それも人脈づくりとか難しい意図があるわけじゃなくて。純粋に、バレーボールは楽しいなー!っていう、それだけでした。
カタリストは、各分野の専門家をつないでものづくりをし、プロジェクトの成果を高めていくのが仕事です。そのプロセスでは設計やデザインに近いことをしたり、クライアントと交渉したり、プロジェクトの成功のためになら、ありとあらゆることをします。業務内容は幅広いし、メンバーのバックグラウンドも美術系から文系学部まで様々です。
自分の例でいうと、美術系学部の出身でしたので、デザイナーとカタリストのどちらの選考に応募すべきか迷っていた部分もありました。就職活動用にポートフォリオを整理していたんですが、それを見ていて、自分の求めるものづくりの本質はつまり、インターフェイスの開発なのか、デザインなのか、企画なのか…ハードウェアもソフトウェアも経験していたぶん、かえって、どこに重点を置いて考えればいいのか、よくわからなくなっていて。
たまたまチームラボの役員が会社説明会で大学院に来たことがあったので、そのとき直接、自分のポートフォリオを見てもらいました。相談していくうち、ある手法の専門家になって美しい絵をつくることよりも、みんなでものづくりを成功させるために動き回ることのほうが、自分の経験や長所が活きてきそうだなと気づいて、カタリストでの選考を選びました。
参考までに言うと、同じ大学院の中では就活に精を出していた方でした。とはいえ、数でいうと4社くらいしか受けてないんです。「就活しないとな…」という思いは漠然と頭にあったんですが、修士論文や制作をしていたこともあり、それが終わった後でもどうにかなるだろうと楽観的に捉えていて、興味がある面白そうな企業をいくつか選んで選考を受けてました。チームラボ以外では、電機メーカーやゲーム機メーカーなどのUI・UXデザイナーを志望していました。
入社前の印象ですが、会社説明会のときにはチームラボハンガーが代表事例として紹介されていたので、ハード寄りで流行を追ったプロダクトを作っているイメージが強かったです。ソリューション事業のように、丹念に考察を積み重ねる仕事をやっているイメージはあまりなくて、あるとしてもキャンペーンみたいな、キャッチーさ重視の単発プロジェクトが多いのかなと思っていました。
実際に入社してみると、骨太な大規模システム構築案件などにも携わっていることが、だんだんわかってきました。ソリューション担当メンバーのほうが人数構成的には多かったりしますし、チームラボの思想や開発力は、ソリューション事業を通じて磨かれてきたものでもあると思います。いい意味で予想とは違いましたし、個人的にはそのギャップには肯定的です。目立つことが目的の仕事ばかりやっているとしたら、それだけで大丈夫かなと心配になってしまいますので。
ソリューション事業を担当するにあたって、個人的な目標がありました。企業のなかで共同制作をするのだから、単にものづくり特有の文化に馴染んで満足してはいけない。独りよがりにはならず、社会人としての基本を身につけて、専門性も立場も違うメンバーやお客様と協力しあいながら、仕事を丁寧に進めていく。この一連の流れを、責任を持ってこなせるようになりたいと思っていました。幸運なことに、これまで大規模なシステム構築のプロジェクトにいくつも携わることができました。そこでかなり鍛えられましたし、大きく成長できたと思っています。よく誤解されがちですが、クリエイティブな仕事をするからといって、そこに特別なものは何もなくて、どんな仕事でも大事にすべきベースは同じだと考えています。
何かをつくったり、研究して論文書いてたりするのであれば、あとは自分のアウトプットにどれだけ自信を持てるかが大事だと思います。実績を出すときには、やるべきことをやりきった自信を見せてもらえたらいいなと思います。やっぱり熱意は話していると伝わってきます。あとは熱意にプラスして、その裏付けをデータとか証拠で伝える工夫が必要だと思います。具体的には、ポートフォリオの作り方だったり、サマリーの出し方だったり。研究内容だけじゃなく、伝え方の部分にまで、こだわりを広げてほしいですね。
チームラボは専門家集団ですが、一方で、専門家になることだけが、ものづくりの仕事というわけではないと思います。表現手法にこだわらないけれども、いいものづくりがしたいという方にとって、カタリストは答えのひとつになるんじゃないかと思います。自信作のご応募、お待ちしています!